第8回日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会総会

会長挨拶

学会形式変更についてのお知らせ

2020年日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会(JOPBS)会長を拝命しております、川崎医科大学総合医療センターの中島一毅です。2020年2月より急速に拡大、世界的に医療・経済に大きな影響を与えている「COVID-19」の国内、国外での波及・沈静化状況、並びに各国の政治的状況も注視しながら、本年度の学会開催のあり方を検討しておりました。7月にはいり、国内では非常事態宣言が解除され、移動制限は緩和されましたが、依然、大人数での集会は自粛するように行政指示が出ております。今後、指示が撤廃されるか、条件付きで許可されるか未だ見通せません。また、第二波、第三波の可能性も低くありません。

当初、開催中止、延期も検討しておりましたが、2020年度末の来年3月まで伸ばしたとしても、11月以降は寒くなり、空気が乾燥している時期となります。おそらくインフルエンザも流行するでしょう。発熱患者の受診が急増し、検査件数が増え、病院機能の再低下も懸念されます。今年の1月からの経緯を鑑みると第二波、第三波が生じている可能性はむしろ高く、移動、集会が規制されている確率がより高いでしょう。もちろん感染防止策が完成し、感染蔓延状態でも集会可能となっている可能性もありますが、かなり希望的観測と思われます。

そこで、愚考かもしれませんが、当初より予定しております10月初めであれば、移動制限が再施行されていないのではないかと考え、予定通りの開催日程で行うことにいたしました。つまり今回の総会は「with corona」での最初のJOPBS学術総会となるということになります。おそらく「COVID-19」の社会的影響が無視できるのは数年先でしょうし、新たなウイルスの蔓延も否定できないことから、しばらくはこの状況が続くと思われます。

そこで今回の学会は「人が密に集まらない環境での会場参加+WEB参加」のハイブリッド開催として準備させていただくことにしました。もちろん、今後、強力な移動制限、集会制限が復活される可能性も否定できませんので、今後の状況変化を引き続き注視して、対応してまいりたいと思います。もし移動制限が発令された場合にはWEBシステムによる講演、発表、受講、質疑応答、Votingのすべてが可能なシステムへ移行できるように柔軟な準備を行ってまいります。

幸い今回の岡山総会では大きな会場を建物ごと確保しており、本総会の参加者数からすると十分に一人当たりの空間確保が確保可能です。会場レイアウトは「with corona」を想定して大幅に見直しました。席配置の他、入室時にある程度の席指定もさせていただき、密にならないように発表・聴講できるよう配慮いたします。もちろん、手指消毒、換気にも十分に気をつけます。

また、WEB参加の方も、会場の参加者状況などをうかがい知れるような通常学会総会に近いシステムを構成する予定です。今後の学会総会を見据えて、密にならないように配慮した上で、学会参加で最も重要な参加者間の交流ができるシステムを構築したいと考えております。

運営方法の変更に伴い、一部、予定していた企画に変更が生じる可能性がありますが、基本的に以前、掲示していたシンポジウム、パネルディスカッションは開催予定です。また、若い先生が勉強できる場を重視するため、著名な先生方による教育講演を充実させる予定で、WEBを使ったVotingも計画しています。

さて、今回の総会ではテーマを「Fidelity & Fealty」とさせておりました。これは、昨年、乳房再建術業界に激震をあたえた「アラガンクライシス」を念頭において、考案したテーマです。乳房再建保険収載後、これまでの日本の乳房再建手術はアラガン社の製品しか保険で認められておらず、精度管理の観点から本学会主催の講習会の受講を必須とし、手順に沿って忠実に手術を実施することを強いていました。「Fidelity」とは「忠実性」の意味合いの言葉で、これまでの日本の乳房再建術に求められていた「忠実なる精度管理手術」を意味しております。ところが、昨年の「アラガンクライシス」により、この構成が崩れ去りました。人工物による再建手術ができない状態となり、乳腺外科医、形成外科医は乳房再建を希望する患者さんにいまできる最もいい方法を考案し、提供する自主性が求められることになりました。「Fealty」とは、患者さんのための「忠義・忠誠・献身」を意味しており、各医師が大切な患者さんのために最もいいと思うことを考案、工夫して実践している状況を意味すると考えています。おそらく多くの先生がたは昨年から「Fidelity」⇒「Fealty」とシフトされて診療をすすめられていることでしょう。今回の「with corona」もそうですが、刻一刻と変化していく医療状況に振り回されずに、大切な患者さんのため、我々、乳腺外科医・形成外科医がとる診療スタンスを代弁した用語と考えております。

さらに、先月から乳腺外科医にとっては新たな問題、「リュープリンクライシス」も発生しました。診療している患者さんに対する「Fealty」として、薬剤の手配、治療計画調整など多くの工夫などをされていることと思います。まさしく、今の乳腺外科医・形成外科医は「Fidelity」だけでは、患者さんへの「Fealty」が保てない状況にあるのです。

このような乳腺外科医・形成外科医を取り巻く医療状況をふまえ、「with corona」でも柔軟な医療が構築できるように一緒に勉強できる環境を提供したいと思っております。また、若い先生、これからグレードアップしていきたい先生のために、教育企画を充実させる方向に舵取りをしております。「参加して、WEB聴講してよかった!明日からの診療に役立つ!」と感じていただけるような学術総会にしたいと思っております。

このシステム変更に伴い、改めて演題募集期間を延期いたします。ぜひ、中四国初の日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会総会にご参加をお願いいたします。

2020年7月3日
第8回日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会総会
会長 中島 一毅
(川崎医科大学総合医療センター 外科・川崎医科大学 総合外科学)