第41回癌免疫外科研究会

当番世話人挨拶

第41回癌免疫外科研究会
当番世話人:和田 尚
(大阪大学大学院医学系研究科 臨床腫瘍免疫学 特任教授)
 第41回 癌免疫外科研究会の当番世話人を拝命しました。近年の癌免疫研究の急速な発展と認知度の上昇は、本庶佑博士とJ.P. Allison博士による免疫チェックポイント阻害剤開発研究とノーベル賞受賞抜きには語れません。顕著な臨床効果は患者や現場の医師のみならず、研究者にとって癌免疫療法の新世代への突入を体感させているところです。そして更なるグレードアップを目指し、研究対象として免疫チェックポイント分子に加え制御性T細胞、MDSC、TAMをはじめとする免疫抑制因子や、バイオマーカー探索からのマイクロサテライト不安定性、ミスマッチ修復遺伝子、遺伝子変異などにも研究対象はおよび、遠く離れていたリンチ症候群にも光が当てられるようになりました。かと言っても、旧来の免疫療法がすべて刷新されたわけではなく、T細胞の活性化としては抗原特異的T細胞の代表とされるCAR-TやTCR-T療法といった新規治療法も以前からの養子免疫の次世代型として発展し、がんワクチン療法も標的が共通抗原からネオ抗原へグレードアップするなど、温故知新というよりは脈々と引き継がれてきた癌免疫療法の知識と知恵を利用しています。
 腫瘍外科医は外科的切除に使命を持っているのみならず、その後の再発にも責任を持って臨牀に当たっています。手段の一つとしての癌免疫の研究も、やはり外科医の使命に含まれるでしょう。皆様の卓越した免疫分野の頭脳と手術で磨き抜かれた手・感性・経験を大阪の地に集合させ議論することで、持続可能な発展を伴う標的としての新しいがん免疫研究を発展・開拓することができる事でしょう。
 しかしこの半年ほどの世界情勢は感染免疫に取って代わられた感もしてしまいます。特別企画やセミナーそして、免疫染色とがんゲノム、さらには臨床・基礎からの免疫学、血管新生などに関する講演を二日間みっちりと準備しましたが、姿も見せずに忍び寄り短期的な体の異変を引き起こす病原体には、集中して知識・意識を活動させることも困難かと、一日に凝縮し開催する運びとしました。ご理解の上、種々ご協力を賜りますようお願いいたします。
 大阪の地での純然とした研究会へのご参加と、純粋な知識の蓄積に向けたあくなき欲求に向け、十分に満足をしていただけるよう教室員一同、皆様をお待ちしています。
 ただし大阪の夏はHotです。がん免疫療法のバイオマーカーではありますが、大阪の太陽のもとでは体力を温存しましょう。無理に正装で来場・発表の必要はありません。重鎮の方々が顔をしかめない限りは、ラフなドレスコードでお越しください。ポロシャツ・綿パンOKですよ。